奈良吉野桜の観光を楽しむ:吉野行き列車内の風景と千本桜の絶景

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横に来て席に座る前、ちらっとこちらを見たから嫌な予感がした。

案の定、座ると同時に荷物を開けて巻き寿司を食べ始めた。

5切れほど一列に詰め込んでパックにしてコンビニに売っている、あの巻き寿司だ。

甘酸っぱい匂いが周囲に撒き散らされた。

今日は暖かいから、よく臭う。

 

奈良吉野の桜を愛でようと、大阪阿倍野駅から8時20分発の、この吉野行き近鉄急行に乗車。

吉野駅まで直通の特急に乗って行こうとしたが、もうすでに3本先まで満席。

やむなく大阪阿部野橋駅折り返しのこの急行に乗ろうと、20分も前から並んだおかげで座ることができた。

腰痛を持つ身にとっては1時間半、座って行けるのはありがたい。

 

巻き寿司を頬張るその主は、少し年下の60歳手前か。

茶系の合皮の靴とグレー地にストライプの入ったスーツ。

そのスーツの下には、白地にブルーのストライプのシャツと、どのように表現すれば良いのかわからない黒っぽい柄のネクタイ。

それにカーキ色でキャンバス地のボストンバックといった出で立ちを持っている。

 

巻き寿司は10分そこそこで食べ終えた。

やれやれと思ったその矢先、ボストンバッグの中のコンビニの袋をガサガサ言わせ、手巻き寿司を取り出した。

今度は海苔の破片攻撃か。

「酢の匂いよりもマシ」と心に言い聞かす。

 

周りを見回すと大きなリュックサックを持った、現役を退いてから相当の年月を重ねた方達の団体。

席を無理やりこじあけて座っては、隣の若者に、もう少し詰めろと催促をする。

若者はもうこれ以上は無理といった顔。

リュックサックが乗客で溢れる通路の一角を占領しているのもおかまいなしに、大きな声でお喋りに講じている。

 

最近海外からの旅行客のマナーについて、さまざまな苦言がもたらされている。

一方、テレビの放映では日本賛辞の番組が多いが、実態はこんなもの。

大陸からの若者の方が、格段マナーは良い。

 

ようやく電車は、終点の吉野駅に到着。吉野桜の人気は高いとは聞いていたが、今日は平日。

そんなに混雑しないだろうとタカをくくっていたが、想像以上の観光客に驚く。

人混みでごった返す改札をようやく出ることができた。

山に入ってからは、千本桜の風景が「霞こめたるみよしのの山 」そのものであったことは、もちろんのことである。

 

ところで、くだんの紳士はというと、終点であるこの吉野駅まで同じであった。