「桔梗」は秋の七草のひとつで、日当たりの良い山野に生え、八、九月ごろ、きりっとした輪郭をもつ青紫色の花を咲かせます。
根にはサポニンが多く含まれ、喉に痛みがあるときなど漢方として用います。
この「桔梗」を季語にした有名な俳句が
「桔梗活けてしばらく仮の書斎哉」。
俳人、正岡子規の作品です。
結核を患っていた子規は、日清戦争の従軍記者として従事後、帰国途上の船内で大喀血。
帰国後そのまま神戸の須磨で療養した後、静養のため故郷の松山へ向かいます。
その頃、この松山で中学校に英語教師として赴任していたのが親友の夏目漱石。
帰郷した子規はすぐには自分の家には戻らずこの親友の下宿に身を寄せ、ここで松山の俳人たちと盛んに句会を行います。
この句は、漱石の下宿を「仮の書斎」として表し当時の様子を詠んだものです。
思えば「桔梗」は同居していた義母が好きな花でした。
庭で十数株ほどを育てていましたが、その義母が亡くなって二十年もの年月が経ちます。
共に暮らしていた遠くのその住まいは、いまは他の人が暮らしています。